妊娠中の食生活ナビ
妊娠中の食生活と摂取したい栄養素
妊娠中は赤ちゃんのためにも妊婦の体のためにも、特に食生活には気をつけたいもの。妊娠前期・中期・後期の時期別に、食生活のポイントや、特に摂取したい栄養素をご紹介します。
バランスの良い食生活とは?
妊娠初期は栄養についてはまだ神経質にならなくてもいい時期ですが、ふだんの食生活を見直す意識は持ち始めておきたいもの。「バランスの良い食生活」とは、一体どんなものか、もう一度確認しておきましょう。
一回の食事の中に、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミンの4つの栄養素が含まれていることが、バランスのよい食事の目安になります。これを1日の3回分の食事の中で、偏りなく摂れているのが理想。つわりが治まったら、これらのことを意識しながら、毎日の食生活を充実したものにしていきましょう。
⚫︎妊娠初期(1~3カ月)
●食生活のポイント
つわり時期は無理せずに
この時期はつわりに悩まされる人も多いことでしょう。においに敏感になるので、キッチンに立つことさえ辛くなる人もいるのでは?食べ物の好みが変わったり、食べたいと思うもの、食べられるものも限られたりします。この時期は無理して食べなくても大丈夫。自分が食べたいと思うものを、食べればいいのです。
つわりの症状の対策
つわりの症状には個人差があるので一概には言えませんが、空腹になると気持ちが悪くなることが多いようなので、なるべく空腹を避け、クラッカーやクッキーなど手軽に口にできるものを用意しておくといいでしょう。また、嘔吐がひどい場合は、脱水症状にならないよう、水分補給はしっかりと。その際、糖分の多いジュースは避け、麦茶や番茶、スポーツ飲料などを飲むようにしましょう。
●特に摂取したい栄養素
- 特に摂取したい栄養素:葉酸、食物繊維、ビタミン など
大事な栄養素「葉酸」
妊娠初期に摂取したい栄養素に「葉酸」があります。葉酸とはビタミンB郡の一種で、細胞の生成や発育を助けてくれる栄養素のひとつ。成長が著しい胎児が正常な細胞をつくるために、なくてはならないビタミンです。早産や低出生体重児出産にならないためにも、しっかり摂取しておきましょう。
また、妊娠初期に限らず、中期~後期に渡って摂取するようにしてください。基本は食事から摂取することが望ましく、目安は1日0.4mg。緑黄色野菜や果物など、身近な食材に含まれる栄養素なので、それらを意識的に多く食べるといいでしょう。
しかし、熱や水に弱いという特徴もあるため、サプリメントで摂取するという方法もあります。その際、過剰摂取には注意しましょう。食事で0.4mgを補えているのに、サプリメントも服用することで、過剰摂取してしまっているケースがあります。高用量の葉酸摂取はビタミンB12欠乏の診断を困難にするので、医師の管理下にある場合を除き、葉酸摂取量は1日あたり1mgを越えないよう十分気をつけましょう。
– 葉酸が多く含まれる食品 –
レバー、焼きのり、わかめ、うなぎ、うに、枝豆、モロヘイヤ、パセリ、芽キャベツ、アスパラガス、ライチ、いちご、アボカド など
便秘対策に食物繊維
この時期は子宮が大きくなることにより腸が圧迫され、便秘になる人が多いようです。野菜や海藻類など食物繊維やビタミンが豊富な食材、プロバイオティクスのヨーグルト等を食べるよう心がけましょう。
それでも便秘が改善されない場合は、下剤の服用が考えられますが、むやみに市販薬を服用せず、必ず医師に相談し、適切な薬を処方してもらいましょう。
– 食物繊維が多く含まれる食品 –
米、大麦、オートミール、そば、ライ麦、玄米、サツマイモ、とうもろこし、カボチャ、大豆、きのこ類、干し柿、キウイ、りんご、納豆、ヨーグルト など
もっと詳細情報:厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」
⚫︎妊娠中期(4~7カ月)
●食生活のポイント
急激な体重増加に注意!
中期に入るとつわりがおさまる人が多くなります。その反動で食欲が出て、食べ過ぎてしまうケースも。常にバランスの良い食生活を意識しながら、食生活を充実していきましょう。
急激な体重増加はむくみや、妊娠糖尿病、そして妊娠高血圧症候群を引き起こす原因になります。また、妊娠糖尿病では4,000g以上の巨大児が生まれる確率が上がり、帝王切開のリスクも増加。産道に脂肪がつくため、お産自体も難産になる傾向があります。
食生活をコントロールしながら、急な体重増加に注意しましょう。食事管理の基本は、3食を決まった時間にしっかり食べること。食べたい時にダラダラと食べたり、1食抜いて代わりに間食を多めにする、など不規則な食生活は太る原因に。
また、甘いお菓子も肥満を招くので、食べすぎには注意しましょう。どうしても食べたい時は、栄養価の高い天然素材のスイーツを選んだり、洋菓子よりも和菓子をチョイス。また時には自分で手作りするのもいいですね。市販のお菓子は大量の砂糖やバターを使っているものが多く、保存料などの食品添加物が使われている可能性もあります。自分で作れば砂糖やバターの量も調節できるから安心。気分転換にもなるのでオススメですよ。
痩せすぎにもリスクが
最近は体重管理に神経質になりすぎて、痩せすぎの妊婦さんが増えている傾向があります。妊娠期は痩せすぎもNG。低出生体重児(2,500g未満)の出産の確率が上がるばかりでなく、切迫早産のリスクも出てきます。また、低出生体重児は将来生活習慣病を発症しやすくなるというデータもあります。
非妊娠時に平均体重だった人は、中期~後期にかけての増加体重は1週間あたり0.3~0.5kgを目安とし、太りすぎにも痩せすぎにも注意しましょう。
低塩分、薄味を心がけて!
妊娠中は赤ちゃんを守るため、母体は水分が多くなり、むくみやすくなっています。和食は低カロリーで栄養バランスも高いためオススメですが、比較的塩分が多いのが気になる点。なるべく薄味を心がけ、塩分摂りすぎに注意しましょう。また、ソーセージやハムなどの加工食品にはかなりの量の塩分が含まれています。調理法に気を付け、低塩分、薄味の食事を心がけましょう。
●特に摂取したい栄養素
- 特に摂取したい栄養素:鉄分、葉酸、食物繊維、ビタミン など
貧血予防に鉄分はたっぷりと!
妊娠20週を過ぎた頃から、血液循環量が急激に増え、相対的に赤血球が減るので貧血の心配が出てきます。
また、母体の貧血は出生後の赤ちゃんの発育にも影響が出てくるので要注意。特に妊娠中に多いのは鉄欠乏性貧血でそれを予防するためにも、鉄分が豊富な食べ物、それと同時に鉄分の吸収を高めるためビタミンCや良性たんぱく質が多く含まれる食材をしっかり食べましょう。
– 鉄分が多く含まれる食品 –
レバー、ヒレ肉(牛、豚、鶏に限らず)、いわし、まぐろ(赤身)、かぼちゃ、ほうれん草、豆類、高野豆腐、切干大根、ひじき、ドライフルーツ など
カルシュウムは妊娠前の1.5倍に
カルシュウムは胎盤を通して赤ちゃんに移行するので、妊娠前よりも1.5倍の量が必要になります。赤ちゃんの骨を作るため、また血液の重要な成分となる大切な栄養素なので、しっかり摂取することを心がけましょう。
– カルシュウムが多く含まれる食品 –
牛乳、ヨーグルト、チーズ、丸干しイワシ、煮干し、ちりめんじゃこ、木綿豆腐、高野豆腐、油揚げ、納豆、小松菜、ひじき、切干大根、わかめ、こんぶ など
もっと詳細情報:厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」
⚫︎妊娠後期(8~10カ月)
●食生活のポイント
胃がもたれる時は、小分けにして
後期に入ると胎児が大きくなるにつれ、子宮が胃を押し上げ胃が圧迫されるため、一度に食べられる量が減ったり、胃がもたれやすくなります。1回の食事量を減らし、数回に分けて食べると、消化不良や胃の不快感が軽減されます。量よりも質を重視し、栄養価の高い良質なものを食べるようにしましょう。必要な栄養素量が全体的に増える時期なので、特に食生活には気を配りましょう。
里帰りや産休で食べすぎ注意
里帰りや産休に入ったことで、気が緩み、逆に食べ過ぎてしまう人もいることでしょう。また、9カ月くらいになると、赤ちゃんが骨盤のほうに下がり、胃の圧迫が楽になり、食欲も増してきます。とは言え、食欲にまかせた生活は危険。せっかくここまで順調に体重コントロールをしてきたのに、最後の気持ちの油断で一気に体重が増えてしまった!ということがないよう、最後までしっかりバランスのよい食生活を心がけましょう。
●特に摂取したい栄養素
- 特に摂取したい栄養素:カルシュウム、鉄分、葉酸、食物繊維、ビタミン など
鉄分、カルシュウムはしっかりと
妊娠中期から引き続き、鉄分やカルシュウムはしっかりと摂取しましょう。貧血で出産にのぞむと、出血が増えるなど、予想外のトラブルを招きます。鉄分不足には十分注意しましょう。また、赤ちゃんの骨の発育や、出産後の母乳のためにも良質なたんぱく質や、カルシュウムをたくさん摂ることを心がけましょう。
– 鉄分が多く含まれる食品 –
レバー、ヒレ肉(牛、豚、鶏に限らず)、いわし、まぐろ赤身、かぼちゃ、ほうれん草、豆類、高野豆腐、切干大根、ひじき、ドライフルーツなど
– カルシュウムが多く含まれる食品 –
牛乳、ヨーグルト、チーズ、丸干しイワシ、煮干し、ちりめんじゃこ、木綿豆腐、高野豆腐、油揚げ、納豆、小松菜、ひじき、切干大根、わかめ、こんぶ など
もっと詳細情報:厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」