心臓病のはなし
心臓病のはなし
心臓病には生活習慣が大きく関係しています。どのようなタイプがかかりやすいのか、また生活習慣の改善方法をみなさんにお教えします!
胸が痛くなる病気は多いのですが、中年過ぎて胸が痛くなると、誰でも狭心症ではないかと心配します。しかし、慣れた医師が診ると、狭心症とそうでない病気はかなりはっきり判別できます。
狭心症は以下の2つのタイプに分けられます。痛みは胸痛の発作として起こり、通常2~3分、長くても10分までです。
- 安静時狭心症
明け方になると、胸に圧迫感をおぼえて目がさめるのは、安静時狭心症の可能性が高く、これは動脈が収縮するためだといわれます(冠れん縮性狭心症)。 - 労作性狭心症
「階段を上がると決まって胸の圧迫感があるが、少し休むとよくなる」という訴えは、まず狭心症です。労作にともなうということで、労作性狭心症といわれます。なかには胸痛ではなく、背中や肩あるいはあごが痛くなって、整形外科に行く人もいますが、原因は心臓にあります。
- 急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は、激しい痛み、呼吸困難、吐き気、嘔吐、ときには意識がなくなることもあります。おかしいと思ったらすぐ救急車を呼ぶようにしましょう。はじめの3時間以内が重要で、この時カテーテルか血栓溶解剤で血管の内腔を広くするという点に急性期治療のポイントがあります。
狭心症と心筋梗塞は総称して虚血性心疾患あるいは冠動脈硬化症ともいわれています。心筋梗塞は、米国では死因の首位を占めています。わが国ではがんによる死亡が第1位で、狭心症や心筋梗塞などによる死亡率は、米国の20%に過ぎません。しかし、40歳代、50歳代の働き盛りの人がかかって亡くなる率が高くなっていて、過労死の過半数が急性心筋梗塞という現状です。狭心症や心筋梗塞などは、典型的な生活習慣病です。それは米国への移民や日系二世、三世に心筋梗塞の頻度が高いことからも明らかです。
一般に、胸痛の訴えは女性に多いのですが、女性は男性よりも動脈硬化の進行が遅いので狭心症は少なく、とくに閉経前の胸痛は、狭心症ではないことが多いのです。
また、労作などの誘因がなく、時々胸がしくしく痛くなるのは、狭心症ではありません。肋骨の下をおさえると痛みを訴える場合は、たいてい肋間神経痛です。若い人では、よく真ん中に近い肋軟骨の部分に痛みを訴えます。放置しても1か月くらいで痛みはよくなります。
それでは、どのようなタイプが心臓病にかかりやすいのでしょうか。キーワードは生活習慣。まずは、生活習慣に関係のない危険因子、次に生活習慣病とも絡めて心臓病への注意が必要な危険因子をご紹介します。
男性 > 女性
高齢 > 若年
家族歴(遺伝歴)
女性より男性、若年より高齢者、家族歴(遺伝歴)がある人に多いのですが、これらの諸因子は、人為的には避けられません。
生活習慣に関係のある3大因子:
喫煙歴、血中脂質異常、高血圧です。さらに糖尿病、肥満がこれに次いでいます。またストレス、うつ病、高尿酸血症なども関係があるといわれ、最近は、蛋白尿、運動不足、高ホモシスティン血症あるいはインスリン抵抗性(インスリン利用の低下)なども注目されています。
■喫 煙
■血中脂質異常 総コレステロール 240mg/dl以上
HDLコレステロール 35mg/dl未満
中性脂肪 150mg/dl以上
LDLコレステロール 160mg/dl以上
■高血圧 140/90 mmHg以上
■糖尿病 空腹時血糖 110mg/dl以上
■肥満 BMI 25以上
■高尿酸血症
■精神的ストレス、不安、抑うつ状態
■蛋白尿
■運動不足
■高ホモシスティン血症
以上の中から当てはまる危険因子が多いほど、心臓病に対する注意が必要です。ただし、生活習慣は心掛け次第で改善できます。
生活習慣の改善:
男性と女性、中年と高齢者、職業やライフスタイルなどで、重点のおき方が違ってきます。次のような事項に注意しましょう。
●中年男性、ヘビースモーカー、生活が不規則、多忙で外食が多い、血中脂質も高めである
これらの項目すべてに当てはまる人は、急性心筋梗塞にかかりやすいので、まずは徹底した禁煙が大切です。
●50歳過ぎ、軽度肥満、高血圧、血糖値上昇、高脂血症など、複数の危険因子を有する人
これらは多発性危険因子症候群といわれ、動脈硬化が促進されます。運動、野菜・果物の摂取、カロリー制限をおすすめします。
●女性
女性は男性より心臓病にかかる率は低いので、同程度のコレステロール値でも危険度は少ないのですが、閉経期(平均50歳)を過ぎると、総コレステロール値が上昇し、70歳になると男性とほぼ同程度の動脈硬化に達するので注意が必要です。
●70歳以上の高齢者
まず高血圧管理に主眼を置きます。コレステロール値や血糖値はやや高目でもよいのですが、禁煙と運動習慣が大切です。
共通の生活習慣改善策として、禁煙は重要ですが、適度のアルコールは差し支えありません。運動量として、1日30分は歩くようにしましょう。室温で固まる油脂(動物性脂肪)や魚の臓物を避け、緑黄色野菜と果物を毎日摂るようにしましょう。
(健康事業総合財団[東京顕微鏡院] 学術顧問、東京都老人医療センター名誉院長 小澤利男)